Fly Front Jacket
Fly Front Oolong Jacketの製作過程を作図、仮縫い、サイズ展開、フルパターン、縫製、仕上げの順に平面の紙、一枚の布から服が出来るまでの工程を紹介します。
作図です。Lサイズを基準に後々サイズ展開するので、元型はLサイズで身頃、袖、衿、ポケット位置、シルエットなどを書き込んで行きます。
先程の作図をトワルという布地に写し取り、上の写真のように一度服の状態まで簡易的に縫い合わせて着用(仮縫い)し、歪み、シルエット、ポケットの位置などが良いかどうか確認して修正点があれば、この作業を何度も繰り返します。シルエットやポケットの位置はデザインでもあるので使いやすさと外見のバランスを考えて決めていきます。
仮縫いで修正点がなくなったら、修正した点や新しく決めたシルエットの線を作図に新たに書き込んだ後、服の裏地の作図をしていきます。上の写真は袖の裏地の作図です。裏地は表地と重なる事で外回り分が足りなったり、表地の種類や縮み、固さなども踏まえて計算して作図をしていきます。人体には複雑な凹凸があり、特に袖周りや衿周りは計算とシルエットが合致していないと服として成り立たなくなります。
作図を新しい紙に写し取り、その内部に縫製の手順などを記述した後、縫い合わせる時に必要な縫い代という余白を周囲に書き込み正式な型紙を制作する事を、フルパターンと呼びます。その後縫い代の極をカットしたものが上の写真です。
このフルパターンを使用して本番の生地、手順でサンプルを制作し実際に出来上がりを着てみないと分からない動作、デザインの確認をしていきます。
上の写真が出来上がった1stサンプルです。修正する点などは着込まないと分からないので普段の生活で一ヶ月程着用しています。修正するに至ったのは、胸ポケットのフラップ部分の形状変更(角を削った方が開きやすかった)、衿内のブランドタグ付けの土台(三角形で縫いつける場所が柔らかいフリースなのは難しく縫製に時間がかかる)、肩玉縁ポケット内部の隠しポケットのマジックテープ開閉は使いづらい)の3点でした。
縫製面、使いやすさの修正点が作図時の平面では分からなかったのですが、立体にする事により分かるようになります。この修正した箇所を再びパターンに書き込んでいきます。
サンプル制作で修正が終わったのでサイズ展開をしていきます。サイズ展開の事をグレーディングと呼びます。上の写真は身頃のグレーディングになります。
S,Mサイズの寸法を決め、ピッチ方式という方法で各パーツをSとMサイズに展開していきます。これにより元型のLのシルエットそのままに各サイズは縮小されています。ですがSサイズなど身頃が小さく丈が短くなる事で元型と差が出すぎると、ディテールの位置が合わなくなってくる事もあるので、そういった場合は元型を無視して良い位置を探し、全体のバランスが崩れないようにフリーハンドで修正することもあります。
その後、S,Mサイズもフルパターンを制作して、サンプルを作り修正点が無ければ量産に入っていきます。
量産です。まず生地、接着芯の裁断から始めます。
生地には地の目という方向があり、それは生地端の直線の事でこれを縦とします。地の目から垂直方向を横とします。縦は伸び、横は伸びないので各パーツの適性を元に地の目に合わせて裁断していきます。斜めにパーツを裁断するバイアス取りという方法もありますが、今回は必要ありません。縦横がずれて裁断すると出来上がりが美しくないので裁断は簡単に見えて気を使う作業です。
工場で行う場合は大きな裁断機や自動裁断機を使用するので上の通りではないです。
上の写真で30着分になります。
主に使用する60番手の糸です。60番手は中厚の生地に使用する定番の番手です。糸の太さもデザインの一部で、60番手より太い糸は存在感がありますし強度が高いので良く使用しますが、今回は比翼のジャケットで、ボタンを見せないなどシンプルな見た目にデザインしているので、糸も目立たせたくなかったので60番手を使用しています。
また使用する糸の太さや、生地の厚みによってミシンの針の太さも変わってきますが、今回は60番手に合わせて11番という中厚生地用の針を使用しています。
量産では一着づつではなくパーツ毎に全着分、一気に縫製していきます。
またどのような縫製手順で縫えば最短で出来るのか、難しい縫製箇所の縫製方法などを文章と写真でまとめた工程分析表を作り、それに従って縫製していきます。
上の写真はサンプル制作時にメモを取りながら作った文章の工程分析の一部で今回のジャケットでは、大きく分けると29の工程があります。
工場生産の場合、工程分析は工場さんが決めることが多いので必要ないですが、自分で縫製するには時間のコストを考慮すると確実に必要なことです。
縫製前に接着芯と呼ばれる生地の型崩れを防いだり、厚み、固さを持たせて補強する材料を貼り付けます。
接着芯にも種類は沢山あり、今回作るジャケットはカジュアルなので、あまりカチッとし過ぎないよう程よい張りのある中厚の接着芯を使用しています。
まず、細かいパーツから縫製していきます。
ポケットフラップ(蓋)、胸ポケットにマジックテープを縫い付けておきます。
先に縫い付ける理由は、出来上がった表面上ではマジックテープが縫ってある事が分からないようにする隠し縫いというデザインの為です。
2枚のフラップ用生地を、中が表で縫い合わせ角をカットしておきます。
角をカットするのは、表に返した時に角に布地が集中して綺麗に返らない事を防ぐ為です。カットしておくと布地が角に集中せずに綺麗に返ってきます。
表に帰して形状をアイロンで整えたら、ステッチミシンをかけてフラップ制作は完了です。
上の写真は裏側を写したものですが、表から見ると隠し縫いによりマジックテープが付いている事が分からなくなっています。
胸ポケットは、縫い代を三つ折りにしてステッチミシンをかけて完成です。
袖口タブ、腰タブを制作していきます。
袖口、腰タブは長さが違いますが同じ形状、縫製方法なので袖口タブのみ縫製手順を掲載します。
2枚のタブ生地を中が表で縫い合わせ、表に返した時に生地が重なりそうな箇所、角をカットしておきます。
表に返してアイロンで形状を整えたら、周囲に2本ステッチミシンをかけます。
ハトメ穴という先が丸く膨らんだボタンホールを開けます。主に大きく厚みのあるボタンを使用する場合、生地に厚みがある場合などに使用します。
ボタン直径が18.8mm、ボタンの厚みが3mm程なので直径と厚みを足して21.8mm程のボタンホールを開けています。これは厚み分量を加算しないとボタンホールをボタンが通過しないことがあり得るからです。
これで袖口、腰タブは完成です。
胸ポケットを身頃に縫いつける為に、縫い代をアイロンで整えます。
上の写真のように小さなカーブはフリーハンドのアイロンでは上手く形を整えられないので、厚紙を出来上がりの形状に切って紙定規を作り、そのガイドラインに沿ってアイロンで縫い代を整えていきます。
一気に紙定規に合わせて縫い代を畳めば良いわけではなく、手前2〜3mmを徐々にアイロンで潰していき、ある程度畳んだ時どこに縫い代が分散するか確認した後、縫い代が1箇所に固まらないように全ての縫い代を畳みます。
熱で縮みが発生しやすい生地を扱う場合は、アイロンのテクニックが高くないと上手に形状を作ることは難しいです。
身頃に胸ポケットを縫い付けます。
ポケットの極を1mmステッチミシンで縫い止めて完成です。
片玉縁ポケットを制作していきます。
その前に右片玉縁ポケット内の手の差し込みと、物の収納を分ける為に考案したセパレートファスナーポケットを制作していきます。(サンプル製作時はマジックテープ開きの隠しポケット仕様だった所を修正した箇所です。)
上の写真はセパレートファスナーポケットに必要なパーツです。
袋布と呼ばれるパーツの生地端に、ロックミシンと呼ばれる生地のほつれを防止するミシンをかけて処理します。
この袋布は手を差し込んだ時の手のひら側に当たる部分になります。(袋布は3枚使用するので、この袋布を仮に袋布Aとします。)
先程の袋布Aに見返しと呼ばれるポケットの、入り口すぐに当たるパーツを縫い付けます。
見返しを付けて袋布と切替えす理由は、ポケット入り口は負荷がかかりやすいので袋布の生地では耐久性が足りないのとポケットを開いた時に袋布が見えては見栄えが悪いからです。
中間が空いているのは、そこに後にファスナーを付けてもう一つのポケット口にする為です。
先程縫いわせた袋布Aと見返しの縫い代を裏からアイロンで割り、空けておいた箇所にファスナーを縫い付けます。上の写真は縫い付け後ですが、ファスナーがズレないようにピン止めし周囲を5mm間隔で縫い付けています。
表から見た写真です。
ファスナーは金属ファスナーを使用しています。着用し手を差し込んだ際、感覚でファスナーを開け閉め出来るように、長さがあり自由な方向に動かせて掴みやすいチェーンリング型の引き手を使用しています。
糸の色を袋布Aの色に変えて、袋布Aの倒した縫い代をステッチで止めます。
再び糸の色を戻して、もう一枚の袋布Bを袋布Aの裏から合わせてぐるりと1周5mmステッチで縫い止めます。
袋布Bはセパレートファスナーポケットに手を差し込んだ時に、手のひら側に当たる部分になります。
見返し側の縫い代をステッチで止めます。
これでファスナー以外に開ける所は無くなり、ポケットとして機能出来るようになります。
裏から見た写真です。
これで片玉縁ポケット内部のセパレートファスナーポケットは完成です。次はこれ自体を袋布として使用し片玉縁ポケットを制作していきます。
※左片玉縁ポケットにはセパレートファスナーポケットは無いので、上記で説明した仕様は省いて一枚の袋布と見返しを縫い合わせただけのパーツを使用します。
片玉縁ポケットを制作していきます。
まずポケットの縁になる部分の裏側に接着芯を貼ります。
この接着芯は切り込みを入れたり、生地の重なりで負担のかかる縁部分の補強の為です。
表に返して玉縁となる箇所に、チャコペンと呼ばれる消せる鉛筆でガイドラインとなる線を引きます。
そのガイドラインに合わせて玉縁になる玉縁布を半分に折って開かないよう縦横ステッチミシンで止めたパーツを、出来上がりが合う位置で合わせてステッチミシンで縫い止めます。
先程制作した、セパレートファスナーポケット(袋布兼用)を玉縁布と向かい合わせて、玉縁の出来上がりが合う位置で合わせてステッチミシンで縫い止めます。
裏に返して先程縫い付けた表の玉縁布、セパレートファスナーポケットを避けて玉縁の中心に切り込み、端は矢羽根上に切り込みます。
切り込みを入れた縫い代をアイロンで折ります。
三角部分はしっかりと、他は片玉縁の形状になってからしっかりアイロンをかけるので、今は軽くアイロンしておきます。
切り込みからセパレートファスナーポケットと玉縁布を身頃の裏面に引き出してアイロンで整えます。これで玉縁が形成されました
裏側から見た写真です。
袋布C(フリース素材)を、先程玉縁布を縫い付けた裏の縫い代に中が表で縫い付けます。
端にもう1本ステッチミシンをかけて縫い代が開かないように止めます。
袋布Cは手を差し込んだ時に、手の甲側に当たる部分となります。
手の甲側に当たる部分をフリースにしているのは、保温性の向上と風を通しにくくする為です。
袋布Cを縫い付けて開いた写真です。
アイロンをかけ形を整えます。
セパレートファスナーポケット側の袋布を開いて避けます。
セパレートファスナーポケット側の袋布を開いたまま表に返し、玉縁の両端と下端に0.1mmのステッチミシンをかけて縫い付けます。
先程避けていたセパレートファスナーポケット側の袋布を元に戻しアイロンで整えた後、玉縁の両端と上端に0.1mmのステッチミシンをかけて袋布を貫通させて縫い付けます。
これでポケットの入り口の形状が完成します。
出来上がり方向に全てのパーツを倒して、セパレートファスナーポケットよりも飛び出している袋布Cの余分をハサミでカットします。
袋布C側から袋布の周りを2周ステッチミシンで縫い止めます。
この時アイロンで倒しておいた三角部分も一緒に止めておきます。この作業により、片玉縁ポケットの袋が出来上がりポケットして使用可能となります。
縫製するには必要でしたが出来上がった後にポケットとして作用しない無駄な部分は、重さを軽減させる為ハサミでカットして取り除きます。
表両端を閂止めミシンで縫い止めて補強します。
閂止めとは補強したい部分のステッチの上から、細かくジグザグに縫い止めてほつれを防止させる特殊ミシンを使った縫製方法です。
以上で片玉縁ポケットは完成です。
右片玉縁ポケット内部の出来上がり写真です。
通常状態ではファスナーの引き手も内側に隠れていますが、手を差し込めば感覚で持ちてを掴んで開け閉め出来ます。
左胸ポケットのフラップを縫い付けていきます。
フラップ止めステッチ位置にチャコペンで印を付け、針で止めておきます。
片玉縁ポケットを縫製後にフラップを縫い付ける理由は、先にフラップを縫い付けてしまうと片玉縁ポケットの閂止めミシンが使用しずらくなる為、効率を考えてこの順番になっています。
フラップを生地端から15mmでステッチミシンで縫い止めます。
縫い付けた縫い代15mmの半分をハサミでカットします。
縫い代をカットする事により、次の工程のステッチ止めの際、縫い代が飛び出さず奇麗に仕上がります。
フラップをアイロンで折り、整え7mmステッチミシンで縫い止めます。
これでフラップ縫製は完成です。
隠し縫いにより、表から見るとマジックテープが見えない仕様になっています。
裏の右内ポケットを制作していきます。
右内ポケットは大ポケットを土台として使用し、小ポケットを備えるツインポケットと呼ばれる仕様を応用して、オリジナルな仕様のポケットにデザインしています。
まず大ポケットの上端をアイロンで三つ折りし、2本のステッチミシンで縫い止めます。
小ポケットとなるパーツの上端を三つ折りし、その三つ折りを利用してファスナーを2本ステッチミシンで縫い止めます。
ファスナーは金属ファスナーで、涙型のオートマチック(引き手から手を離すと自動的にロックがかかり、引き手を引っ張る事によってロックが外れる)スライダーを使用しています。
ブランドタグを縫い付け、生地用インクを使用したスタンプを押しておきます。
小ポケットの縫い代をアイロンで折り、大ポケットに縫い付けます。
MADE IN JAPANのスタンプの左下からステッチミシンをスタートし直上、そのままファスナーテープを止め、更に周囲まで一発で縫い切ります。これは縫製時間短縮と出来るだけミニマムな外見になるように考えた縫製方法です。
小ポケットとファスナーの極でステッチを分ける事で一方はペン立て、一方はファスナーポケットと分けたオリジナル仕様になっています。
ファスナーテープの上部はそのままフタとして使用しているので、フタ用の生地、縫製を必要としないので無駄がありません。
ペン立て口など補強が必要な箇所に閂止めミシンで縫い止めます。
キーホルダーやカラビナが掛けれるDカンを、生地をループにして端をステッチミシンで縫い止めておきます。
大ポケットの周囲を出来上がりにアイロンで倒した後、先程制作しておいたDカン付きループを仮止めしておきます。
仮止めしておく事によりステッチミシンで全体を縫い止める際、ズレずに綺麗に縫製する事が出来ます。
裏右前身頃(フリース)に内ポケットを周囲を2mmステッチミシンで縫い付けます。
ポケット口やDカン付きループなど負荷のかかる箇所を閂止めミシンで補強します。
ポケットを縫い付けると同時に、ポケット口の裏側から脇にかけてテープを仮止めしておきます。
これは中とじと呼ばれる手法で、裏側でパーツとパーツをテープで繋ぎ、動かせる範囲を制限させます。
この中とじは内ポケット大への収納に加えて、ファスナーポケットへの収納、ペンの収納、更にDカンへカラビナを付けたりする機能を満たす為、また通常の内ポケットよりも多い収納による重みに耐えられるように、脇でテープを縫い止める事により内ポケットが下へ引っ張られないように補強する特殊な中とじです。
以上で内ポケットは完成です。
衿を制作していきます。
衿は地衿(裏側)と表衿(表側)の2枚を中が表で縫い合わせ、ひっくり返して出来上がります。
上の写真は表衿のフルパターンですが地衿の周囲に2mm追加しているので、表衿の方が微妙に大きくなっています。衿は出来上がった時に折り曲げて使うので、表側になる表衿は外回りの返し分が足りなくなってしまうので、その分量を2mm追加しています。この作業を行う事で衿が綺麗に整います。
地衿と表衿を中が表で縫い合わせます。
先程説明した2mmの追加分が表衿にあるので、角を合わせるので浮き上がりが生じます。この浮き上がりが衿を返した時の外回りの返し分となります。
表衿と地衿を縫い止めます。
表に返す際、生地が重なる箇所の縫い代をカットする事により角が出やすくなり、衿先が綺麗に出来上がります。
衿を表に返し、周囲を5mmでステッチミシンをかけて完成です。
横から見ると表衿の返し分の浮き上がりがよく分かります。
比翼と呼ばれる、パーツを二重にして前開き隠しボタンにする仕立てを制作していきます。第1ボタン以降の4つのボタンに適用させます。
見返しと呼ばれるパーツに比翼になるパーツを中が表で縫い付けます。
凹みがあるのは出来上がった際に表から控えられる分量で7mmになります。
縫い合わせた縫い代の角からステッチの角まで切り込みを入れます。
切り込みを入れる事により綺麗に比翼布が表に返ってきます。
縫い代をアイロンで割ります。
比翼布を表に返して再びアイロンで形を整えます。
表側から極に1mmステッチミシンをかけます。
袖口、腰タブと同様のハトメ穴のボタンホールを特殊アタッチメントを使って開けていきます。
これで比翼となるパーツは完成です。これから比翼を身頃と縫い合わせていきます。
比翼は左身頃のみに縫い付けていきます。
身頃と比翼の縫い代を合わせて、中が表で上端と下端を縫い合わせます。
縫い代をアイロンで割ります。
表に返してアイロンで整えておきます。
このアイロンの際、表から見た時に比翼が見えないように1mmだけ比翼側を控えてアイロンしておきます。
比翼制作は一旦ここで止めておき衿などを縫製した後、一気に仕上げていきます。
袖を制作していきます。
内袖と外袖の2枚を縫い合わせて1枚の袖にする2枚袖という仕様です。
まず内袖に先に制作しておいた袖口タブを仮止めしておきます。
内袖と外袖を中が表で縫い合わせます。
アイロンで縫い代を外袖側に倒し、表から2本ステッチミシンをかけます。
袖下を縫って輪っかの状態になってからではアイロンをかけるのに時間がかかるので、この時点で先にアイロンで袖口の出来上がりの折り跡を付けておきます。
これで袖は完成です。
土台にブランドタグとサイズタグを縫い付けます。
裏の後ろ身頃(フリース)に土台を縫い付けます。
ここで引っ掛けループとなる綿テープを縫い代に仮止めしておきます。
仮止めはしなくても気を付ければ上手くて縫えますが、フリースのような柔らかく伸びる素材ではとてもズレやすいので必須の工程です。
ペットボトルなどを収納できる左内ポケットを制作していきます。
フリース素材は伸び縮みするので、平均のペットボトルのサイズなどを測定してそれよりも少し小さく設計しています。
ポケット口を三つ折りし、ステッチミシンで縫い止めます。
裏の左身頃に内ポケットを中が表で縫い付けます。
脇側にアイロンで倒して両端をステッチで縫い止めます。
脇側は後に裏後ろ身頃と縫い合わせて処理しますが、この縫製方法を縫い目利用といって無駄な縫製を減らし、外見も縫い目を活用しているのでシンプルになります。
フリース素材はアイロンをそのままかけると溶けてしまうので、当て布といって1枚薄い生地などを噛ませてその上からアイロンをします。
ポケット口端に閂止めミシンで補強しておきます。
左前身頃と裏左前身頃を中が表で縫い合わせていきます。
表に返して縫い代を見返し(比翼付き)側にアイロンで倒します。
見返し側の極に1mmのステッチミシンをかけて縫い止めます。
このステッチミシンは表までは貫通させず、見返しと裏前身頃を止めるためのステッチです。
右前身頃にも左と同様に裏右前身頃を中が表で縫い合わせ、見返しの際にステッチミシンをかけて縫い止めます。
この際、右前身頃に前端を出来上がりにアイロンして折り跡を付けておきます。
右内ポケットと見返しの極、上端と下端2箇所に閂止めミシンをかけて補強します。
表の肩を縫い合わせていきます。
表前身頃と裏前身頃の縫い代を中が表で縫い止めます。
表に返して2本ステッチミシンをかけて縫い止めます。
裏の肩を縫い合わせていきます。
裏前身頃と裏後ろ身頃の縫い代を中が表で縫い止めます。
これで表と裏の身頃が繋がった状態になりました。
衿を身頃に縫い付けていきます。
表と裏の身頃の間に衿を挟みピンで仮止めます。
カーブがきつい箇所を縫製する時にピンで止めておくとズレ防止とガイドの役割を果たします。またこのように長い箇所を縫製する際は、合印と呼ばれる切り込みを2〜3mm縫い代に入れておき、その合印同士を合わせてガイドにします。
衿を身頃と縫い合わせた後、縫い代に切り込みを入れます。
衿周りは人体の構造上複雑な曲がり方をする為、首に沿った設計をしていますがカーブがきついので切り込みを入れて、その広がったゆとり分で更に人体に沿わせます。
また、比翼側の左身頃の見返しの先を、表に返した時に綺麗に返るようにハサミでカットしておきます。
表に返し、縫い代をアイロンで整えます。
右見返しの裾から衿を通り左見返し(比翼)の裾までぐるりと一気に5mmステッチミシンで縫い止めます。
ステッチミシンで比翼を通る時は7mm控えていた比翼布の極ギリギリに針を落として5mmステッチをかけます。先程の比翼制作が精密に出来ていないとステッチがズレてしまいます。縫製は連結しているのでどこかで正確さを欠くと、どこかでしっぺ返しを食らってしまうので、難しかったり面倒くさい箇所ほど丁寧に縫製しておかなければなりません。
衿を通る時に綿テープも一緒に縫い止めます。
これで衿周りの縫製は完成し、見返しはステッチミシンで縫い止められました。
比翼の第2ボタンホール、第3ボタンホールの中間を返し縫いと呼ばれる2〜3往復縫い返す縫製方法で1cm程縫い止めます。
糸を切らずに裏に引っ張り出して、結んで処理することにより糸がほどけるのを防止する効果があります。
これは比翼のふらしになっている部分を2分割にして開かないようにする為です。
左右の見返しをステッチミシンで縫い止めていきます。
比翼がズレないようにピンで浮きを押え止めて、チャコペンで印を付けておきます。
ステッチミシンで縫い止める事により、比翼、見返しが固定されました。
第1ボタン位置にハトメ穴のボタンホールを開けます。
第1ボタンホールは比翼ではないので表から貫通させてボタンホールを制作します。
後に袖などを付けて服の形になってからだと第1ボタンホールを開けるのが難しいので、この時点で開けておきます。
表の袖を身頃に中が表で縫い付けます。
後に裏の肩と止めて肩の表裏の開きを抑制する中とじテープを仮止めします。
表に返して縫い代を身頃側にアイロンで倒します。
表から2本ステッチミシンをかけて縫い代を縫い止めます。
この際、中とじテープも一緒に縫い止められています。
裏の袖を裏身頃に中が表で縫い付けます。
縫い代に当て布をあててアイロンで割り、表に返します。
品質表示を仮止めします。
品質表示を裏前身頃にズレ防止の為に仮止めします。
裏脇を縫い合わせます。
裾から袖先まで一気に縫いきります。これで裏身頃と袖が筒状になりました。
後に表の袖下と止めて袖下の開きを抑制する中とじテープを仮止めします。
表に返して縫い代を裏後ろ身頃側にアイロンで倒します。
裏脇の表側から5mmステッチミシンをかけて縫い止めます。
筒状になってからステッチミシンをかけるので、写真のように筒の中を潜りながら縫製していきます。
この際、品質表示と中とじテープも一緒に縫い止められています。
脇縫いで挟み止められた左内ポケットの端を、閂止めミシンで縫い止め補強します。
表脇を縫い合わせいきます。
まず表脇下に制作しておいた腰タブを仮止めします。
表脇を裾から袖先まで中が表で一気に縫い止めます。
後に裏の袖下と止めて袖下の開きを抑制する中とじテープを仮止めします。
表脇の表側から2本ステッチミシンをかけて縫い代を縫い止めます。
裏脇と同様筒状になってからステッチミシンをかけるので、筒の中を潜りながら縫製していきますが裏生地のフリースと違い伸縮しないので少しづつしか縫えず、一番効率的が上がらない工程になります。工場によっては巻き縫いといってミシン自体が筒状になっているのものがあるので、この工程を一発で縫い切れます。
表脇を2本ステッチミシンで縫い止めました。
この際、袖口タブ、腰タブ、中とじテープも一緒に縫い止められています。
これで表裏の脇の縫製は完成です。
表袖口と裏袖口を縫い合わせていきます。
まず出来上がりの状態に表袖に裏袖をはめ込んで、表裏の袖口同士を中が表で合わせて内側から裏返し、ピンで仮止めします。
この工程では既にほとんどのパーツが繋がっているので、繋がっていない空いた箇所から縫製箇所を引っ張り出して縫製します、写真で見ても非常に分かりづらい工程になります。
袖口をフリース側からぐるりと1周縫い止めます。
これで表袖口と裏袖口が縫い合わせられました。
縫い代はフリース側にアイロンで倒しておきます。
表袖に裏袖をはめてひっくり返し、表袖口に先にアイロンで付けておいた出来上がりの折り跡を復活させ、袖口を整えます。これにより設計通り裏袖(フリース)は6cm内側に控えられます。
表裏の境の極、フリース側を1mmステッチミシンで縫い止めます。
表から見た写真です。
これで表袖口と裏袖口が縫い止められました。
袖口先を2mmステッチミシンで縫い止めていきます。
ここを縫い止めておくことにより袖口先の浮きがなくなり、袖口が綺麗に収まります。
表から見た写真です。これで袖口の完成です。
先に縫い止めておいたテープ同士を縫い合わせて中とじをしていきます。
左右の表肩先と裏肩先のテープを縫い合わせ、肩の中とじは完成です。
左右の表袖下、裏袖下のテープを縫い合わせ袖下の中とじは完成です。
右のみ内ポケットのテープを袖下のテープに合流させ縫い止めて、内ポケットの中とじは完成です。中とじ箇所は左右合わせて5箇所です。
裾をステッチミシンで縫い止めていきます。
まず裏地(フリース)にチャコペンで出来上がりの印を付けておきます。裾は長い距離を一気に縫製するので、ズレやすいフリース生地の場合一手間かかりますが、ガイドとしての印がある方がスムーズに縫えるので後々の時間の短縮になります。
表裾をアイロンで三つ折りしておきます。
表裾を先程チャコペンで印した出来上がり線に合わせて、ピンで止めておきます。
表裾の極にステッチミシンをかけて、裾は完成です。
ボタンを縫い付けていきます。
BDUボタンと呼ばれる米軍戦闘服に用いられる、厚みがあるので耐久性に優れたボタンを使用します。Mil.Spec.復刻でM.O.C.ltd製、素材は尿素樹脂で制作されています。
ボタン付けには袖口左右2個づつ、腰左右2個づつ、フロント前開き5個の計13個使用しています。印を付けてボタンホールとのズレが起きないよう正確に縫い止めます。
工場によってはボタン付け専用のミシンがあるので一瞬で縫い付けられますが、今回は手付けなので1個1分程度の時間を要しています。
以上で縫製の全工程が完了です。